3.運動(スポーツ)|側弯症と子供|脊柱側弯症(側湾症)|東京都新宿区・柳沢療法研究所

側弯症と子供

運動(スポーツ)

側弯症とスポーツ

スポーツの是非

側弯症のお子さんにとって、スポーツの是非はどうでしょうか。私は、基本的にはスポーツをやっても構わないと思っています。筋肉を鍛えたり、骨の成長を促す効果もあります。ですが、整形外科の先生の中にはスポーツを禁止される先生もいらっしゃるようです。

ある年の4月になったばかりの頃、中学生になりたての男の子が母親に連れられてやってきました。その子は小学校ではずっとサッカーをしてきて、中学でもサッカー部に入ろうと思っていたところ、側弯症が進行したせいなのか、整形外科の先生に「サッカーをやってはいけない」と言われたと言うのです。それからその母子は病院はおろか、いろいろな民間療法に行かれたそうです。でも、どこにいっても側弯は改善しなかったそうで、私の所にいらっしゃる際にも、「どうせそこも同じでしょ」と母親に言ったそうです。お会いしてもふてくされた態度をとっていて、治療の最中もずっと不機嫌な顔をしていました。治療が終わって、背骨がほぼ真っ直ぐになったのを母親に確認していただき、私はその子に「サッカーやってもいいよ」と言いました。そうしたら機嫌も治った様子で、帰る時にははにかんだ様な笑顔も見せました。

側弯症に悪いスポーツとは

側弯症を持つ子供にとって良いスポーツとは何か、また、しない方が良いスポーツは何かについて、親御さんからよく聞かれますので記します。私としても真実は何なのかといった迷いは多々ありますが、ここはひとつこれまでの経験から、「側弯症」の性質のみに絞って難しいことは抜きにして考えます。

まず、脊柱側弯症とは、その字の示す如く、人体の正面から見て真っ直ぐであるべき背骨が横に弯曲してしまった症状を言います。弯曲している背骨は真っ直ぐな状態よりも重力に逆らって人体を支える力が弱くなります。ですから、重いものを持つとその負荷によって弯曲がより大きくなりやすくなります。特に骨や筋肉が未成熟な子供には大きな負担になるでしょう。

では、重いものを持つスポーツにはどんなものがあるでしょう。真っ先に重量挙げ(ウエイトリフティング)が思い付きます。それから、相手を担いで投げる柔道などでしょうか。まあ、重量挙げに取り組むお子さんはごくわずかだとは思いますが、スポーツクラブなどのトレーニングではバーベルなどを担いでスクワット(立ったりしゃがんだりを繰り返す運動)をするメニューもありますので要注意です。これらの運動は避けた方が無難でしょう。それから、飛び跳ねる動作の多いスポーツ。これは自分の体重が着地時に大きな質量となって背骨にかかりますので要注意です。例えば、バスケットボール、バレーボール、走り高跳び、走り幅跳びなどが思い付きます。

次に、これは主に機能性の側弯症に言えることですが、そのスポーツ特有の偏った動作が背骨の弯曲を生じさせたり悪化させたりする原因になるように思えます。特に球技に多いのですが、野球、テニス、卓球、ゴルフなどは、バットやラケットなどを一方の側に振る動作か多いスポーツです。ですから、これらのスポーツは側弯症の子供にはお勧めできません。

 

スポーツで気をつけること

均等な動作を心がける

ですが、球技は子供に人気のあるスポーツですから、一律に禁止するのも酷だと思えます。どうしてもそのスポーツを続けたいのであれば、私は大人のゴルファーに、練習ではクラブを逆の方向にも振っておいて下さいとよくお勧めしていますが、子供も練習後や家で、バットやラケット、ゴルフクラブなどを逆にも振っておくことをお勧めします。また、練習後の整理運動に、例えば前後屈のように左右が均等な動作のストレッチを取り入れるのも効果的です。

このサイトに取り上げております「身体の歪み改善体操」なども参考にしていただいて、そのスポーツ特有の偏った動作によって生じる体の歪みを蓄積させない工夫を怠らないようにしていただきたいと思います。

学校の先生の知識不足

基本的には禁止する必要のないスポーツですが、問題もないわけではありません。以前、中学1年の女の子が「腰と足が痛い」と母親に連れられてやって来たことがあります。聞けば、病院で椎間板ヘルニアと診断されたとのことです。その子は学校のクラブ活動でバスケットボールをやっていたのですが、学校が強豪校で、県大会を目指して毎日、日曜日も長時間ハードな練習をしていたのだそうです。

母親は、学校に出向いてバスケット部の顧問の先生に、娘が椎間板ヘルニアと診断されたので、しばらく部活を休ませてほしいとお願いしたそうです。そうしたら、その顧問の先生に、「椎間板ヘルニアって何?」と言われたというのです。

バスケットボールは椎間板ヘルニアを起こしやすいスポーツです。監督やコーチは、そのぐらいの知識は持っておく必要があります。ですが、残念ながら学校の現場では、そんな知識もない先生が運動部の顧問をしている例が多いのも現状でしょう。

この頃の子供達は成長に個人差が大きく、理想としては個々の成長に合ったトレーニングメニューを与えることが大切でしょうが、そんなことは望むべくもないことで、ほとんどが一律のメニューによる練習を課せられることになります。専門知識の乏しい先生が、勝たんがために非科学的な練習メニューを思いつきで長時間課せば、子供が故障を起こすリスクも高まります。その結果、才能ある子供たちが、怪我によって才能を開花する前にその道を断念せざるを得なくなることも、決して少なくないでしょう。

かつて、うさぎ跳びは、多くの部活で行われていた

非科学的なトレーニングの例を一つ上げますと、私が子供の頃は、足腰を鍛えるという目的で、うさぎ跳びが様々なスポーツの現場で行われていました。私が中学1年の時に所属していた野球部でも、これを毎日やらされました。有名なスポーツ根性漫画「巨人の星」にも、主人公がうさぎ跳びをする場面が出てきますから、おそらく当時は全国的にスポーツの鍛錬に取り入れられていたものと思われます。ところが、いつの頃かこれが行われなくなったのです。
 調べてみると、膝や筋肉に故障を起こしやすく、トレーニング効果も無いことがわかり、1980年代に、医学的見地から行わないようにとの呼びかけがなされたのだそうです。それまでは、指導していた先生方は、スポーツの鍛錬に大きな効果があるものだと信じて疑わず、やらせていたことと思います。この様に、今まで正しいと信じていたことが、ある時から間違いであるということになることが人生ではたびたび起こります。

 

人生には、価値観の転換を迫られる事態に時々遭遇する

私に起こった、価値観が180度ひっくり返った出来事を二つほど挙げます。その一つに、日焼けがあります。私の子供の頃は、真っ黒に日焼けしている子供ほど健康であり、夏に日焼けをしておくと冬風邪をひかない、などということが半ば常識にように信じられていました。私は痩せていて色白な子供でしたので、夏場などは特にひ弱そうに見え、コンプレックスを抱えていました。この常識は、私が成人した後もしばらく続きました。この頃には、日焼けしている方が健康的に見えて、女の子にもてるのではないかといった思い込みもありました。ですから、学生の頃の夏休みなどにはカンカン照りの日に実家の庭にゴザを敷いて、裸になって日光欲をしたり、海水浴に行った時などは当時流行った日焼け促進用のサンオイルといった油を全身に塗って日焼けに努めました。女性も同様で、小麦色に日焼けした女性が注目を集めたものでした。ですから、当時は男も女も競って肌を日に焼いたものです。ブームの終盤には日焼けサロンなどというものもたくさんできました。
 この、日焼けは体に良いという価値観が一変したのは、私が30前後になった頃からだと思います。ある時を境に、日焼けは体に悪いという考えが一般に広がりました。日焼けのために紫外線を多く浴びることは、肌の老化を早め、ひいては皮膚癌を引き起こす原因にもなるというものでした。今では、海水浴に行っても日焼け促進用の油を塗って積極的に日焼けに努める人はごく少数派になり、多くの人は日焼け止めクリームを塗って、ビーチパラソルなどの日陰で直射日光に肌をさらさないように努めているのではないでしょうか。

 

私に起こったコペルニクス的転回

 もう一つ私に起こった価値観の転換は、「酸素」に関してのことです。それは、私にとってまさに天動説が地動説に取って代わったような衝撃、コペルニクス的転回でした。それは生命にとって生存に不可欠な物質、摂取すればするほど体に良い、絶対的な善、と信じて疑わなかった酸素が、実は体にとって毒でもあると知った時の驚き、ショックは大変なものでした。酸素、正確には「活性酸素」と言い、酸素分子のペアになっている電子の一つ、または一つのペアが欠けて不安定な状態の時を言うのだそうで、この状態の酸素は非常に化学変化を起こしやすく、体内で発生すると、遺伝子を傷つけ、癌などの病気を発生させる元凶なのだそうです。生命の維持に必須の物質が、実は生命の寿命を縮めているというこの矛盾は、にわかには信じがたいことでした。活性酸素は、喫煙や過食、ストレス、過度の運動、紫外線や放射線を浴びるなどで体内に多く発生するそうです。ですから、上記の日焼けも、スポーツも、医療現場でのレントゲンやCT検査も放射線の被爆ですから体に悪いことになります。

 

スポーツは体に悪い?

『スポーツは体に悪い』という本が出たので、購入して読んでみました。スポーツを日常的に行っているグループとそうでないグループに分けてその寿命を追跡調査した結果、「スポーツを日常的に行っている方が短命である」という結果が出たそうで、「酸素を体内に多く取り込むと活性酸素に触れるリスクが高まり、この活性酸素が体を錆びさせ、寿命を縮める」という統計情報を基にした説得力のある内容だったように記憶しています。スポーツをすることは体を鍛えて健康に良いことと信じていた常識がここでもひっくり返ってしまったような衝撃を味わいました。

幸いなことに、人体にはこの活性酸素の害を中和する機能が備わっていて、若いころには少々激しい運動をしても問題にはならないそうですが。

 

情報が錯綜する時代、先生やコーチも悩んでいる

この様な体験(他にもいくつもありますが)をしてから、何を信じていのかわからなくなりました。まして最近は情報化時代。例えば健康法やスポーツのトレーニング法の分野においても、たくさんの情報が溢れ、錯綜しております。正反対のことを「これが正しい」と主張していることも少なくありません。これらの情報を個々人が選択していかなくてはならない時代になったのです。スポーツの現場で子供たちを指導する立場の先生やコーチの方々の迷いは、昔とは比較にならないのではないかと推察いたします。

お勧めのスポーツ

側弯症に良いスポーツ

それでは側弯症の子供にとってどんな運動が好ましいでしょうか。まず、動作が左右で比較的均等なスポーツ、例えば水泳やウォーキング、軽いジョギングなど。それから、そのスポーツ自体に体の歪みを修正する機能を持つもの、例えば、バレエやヨガなど。そして、背骨にかかる負荷が少ないもの。太極拳、ダンス(社交ダンスは除く)などが思い付きます。

特にバレエはお勧め

バレエに関しては、基本レッスンに体の歪みを修正する機能があるように思いますし、体幹の筋肉が鍛えられて姿勢がよくなる効果が期待できるので、お勧めしています。私の所に通っている側弯症の患者さんの中には、バレエを習っている、あるいは習っていたという方がたくさんいらっしゃいます。子供ばかりか、大人もそうです。大人の方の中には、子供の頃に憧れて習いたかったのだけれど当時は近くに習える所が無かったため、大人になってから習い始めた、という方が何人かいらっしゃいます。

私の子供の頃は、バレエは少女漫画の中の世界のことだった

私が子供の頃に、近所に住む同級生の女の子に見せてもらった少女漫画の中にバレエの物語がいくつかあったのを覚えています。長野のど田舎で育った私は、長い間バレエを習うなんて少女漫画の中の世界だけのことだと信じていました。今にして思えば、今も現役で活躍されている森下洋子さんのような方が実在しておられるわけですし、少女漫画の題材になったぐらいですから、東京のような大都会には当時もそんな環境があったのでしょう。

このように、私が子供の頃には少女漫画の中だけの夢の世界だと思っていたことが、今ではその気になれば誰でも、幾つになっても、習うことができるようになったのです。とても感慨深いものがあります。

ピアノも効果的

スポーツではないですが、最近ではピアノを習う子供もたくさんいます。それだけピアノのある家庭もたくさんあることだ思います。ピアノは弾く姿勢も指導を受けますから、背筋が鍛えられて姿勢も良くなるのではないでしょうか。私の所に通っているピアニストの卵は、最近は側弯症の治療よりも、毎日の長時間の練習で疲労した腰や背中の痛みをとってもらうことを主眼にしているほどです。

ピアノやバレエを習う子供が増えて底辺が広がり、テレビや新聞で、世界的に有名なコンクールで日本人が上位の成績を収めたというニュースを目にする機会も稀な事ではなくなって来ています。それだけ日本がが豊かになり、また成熟した社会になったということでしょうか。

側弯症でもスポーツを楽しめる

側弯症の一流選手

側弯症を持っていても、スポーツの世界で活躍されている方々もいます。かの有名な「世界最速の男」ウサイン・ボルト選手も側弯症だそうです。中学三年生でアジアジュニア選手権の個人総合で優勝し、将来を嘱望されている女子体操選手の芦川七瀬さんは、側弯症と闘いながらの競技生活だそうです。側弯症というハンディを持ちながらも、努力によってそれを乗り越えたばかりでなく、ハンディを持たない他の選手達をも凌駕して頂点に立つという功績を成し遂げたこれらの方々は、側弯症を持ちながらもスポーツの道を志している多くの子供たちに大きな希望と勇気を与えたことでありましょう。

才能豊かな患者さんたち

最近では、将来大成するためには、生まれつきの才能に加え、その分野にごく幼少のころから取り組んで英才教育を受けることが必要であるという考え方が半ば常識のようになってきています。私の所にも、才能を見込まれ、将来のプロを目指して毎日長時間の練習に取り組んでいる子供たちが何人か側弯症の治療に通院してきています。ゴルファー、バレリーナ、ダンサー、ピアニストなどの卵たちです。

私は、この子たちの手助けができることに喜びを感じるとともに、こんな幼少のころから自分の将来像を明確に持って、毎日長時間にわたる練習に大して、嫌々ではなく前向きに取り組んでいることに驚きを禁じえません。私の子供時代と何たる違いでありましょう。私が子供の頃は、毎日暗くなるまで遊びに夢中になっていました。自分の将来のことなど
考えてみたことなどありませんでした。まあ、何の才能も無かった私には、結果的にそれでよかったのですが。

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